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五稜郭で氷を作っていたって本当? “函館氷”をめぐるお話

戊辰戦争最後の戦いである箱館戦争の舞台となった五稜郭。特徴的な星形の城郭は現在公園として開放され、市民のみならず多くの観光客に親しまれています。そんな五稜郭の地で、かつて全国に流通する天然氷が作られていたことをご存じですか。

函館五稜郭

函館氷のはじまり

中川 嘉兵衛(函館市中央図書館蔵)

中川 嘉兵衛(函館市中央図書館蔵)

製氷技術のない時代、夏場の氷は非常に貴重なものでした。日本書紀には氷室(ひむろ)と呼ばれる施設で保存した氷を天皇に献上した記録が残され、枕草子や源氏物語には貴族が真夏に氷を口にした様子が描かれています。そんな一部の上流階級しか享受できない贅沢品であった氷を庶民が楽しめるようになるのは明治時代に入ってからのこと。その背景には三河(現・愛知県岡崎市)出身の中川嘉兵衛の尽力がありました。

遠景に函館山が見える五稜郭伐氷図(函館市中央図書館蔵)

五稜郭伐氷図(函館市中央図書館蔵)

遠景に函館山が見える

開港間もない横浜で、牛乳や牛肉など西洋食品の販売をしていた中川。同時期に来日し、横浜で伝道とともに医療活動を行っていた宣教師ヘボンやシモンズと交流する中で医療や食品保存に氷が有用であることを知り、製氷業の将来性に着目。天然氷の製造・販売事業を志します。

 

文久元(1861)年、最初の製氷地に選んだ富士山麓では、採氷には成功したものの、好天で氷が溶けて失敗。その後、諏訪湖や日光、さらに北上し釜石や青森の堤川でも採氷を試みましたが、思うようにいきませんでした。

 

しかし中川はこれに諦めず、慶応3(1867)年に蝦夷地(現・北海道)へ。有川(現・北斗市)での失敗を経て、たどり着いたのが五稜郭でした。当時、堀の水は亀田川から引かれていて、常に新鮮な水が供給されていました。さらに船の利便性が高いとあり、中川は成功を確信。開拓使より7年間の堀の使用権を獲得し、氷の試作を開始します。

そして明治2(1869)年、ついに天然氷およそ500トンを採氷。横浜への輸送と京浜地区での販売に成功しました。

広く流通した函館氷

函館氷の広告(函館市中央図書館蔵)

函館氷の広告(函館市中央図書館蔵)

以降、この天然氷は「函館氷」「五稜郭氷」として全国に流通。当時販売を独占していた輸入氷よりも良質で安価だったことから、またたく間にそれを追い出し、市場を席巻。函館の一大特産物となりました。1881(明治6)年には第一回内国勧業博覧会で一等賞を受賞。賞碑に印されていた龍の紋章にちなみ、「龍紋氷」の名前でも広く普及していきました。

このようにして始まった氷製造は地場産業として急成長を遂げ、函館のまちに賑わいをもたらしました。その後、機械製氷の普及と共に徐々に衰退していくこととなりましたが、現在のような「氷」が身近にある暮らしは、先見の明を持ったひとりの商人と函館・五稜郭との結びつきがあって実現したものだったのです。

[主な参考文献]

 

・今泉慎一/監修『天守台に観覧車が!? 城郭が野球場に!? 『その後』の廃城』 実業之日本社

・藤岡惠子,野村 祐一『人と熱との関わりの足跡(その4)―冷たさを届ける: 天然氷の採取と輸送―』

・函館新聞 平成26年6月14日『五稜郭築造150年 地上に輝く函館の星『冬の産業支えた函館氷』

・近江幸雄 『函館郷土秘話』

・ニチレイ『氷と暮らしの物語 第1回 中川嘉兵衛と氷業のはじまり』(ウェブサイト)

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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